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2000年7月神津島の地震災害と降水量に関するメモ

最終更新 2000/07/08

本web中の,災害関係ページの記述は,基本的にページ作成時までの情報を元に作成しており,その後の更新はしていません.
災害概要
 2000年7月1日16時01分頃,伊豆諸島神津島近海を震源とする地震が発生し,神津島で震度6弱を観測した.この地震により,神津島では土砂崩れに巻き込まれて車を運転していた男性1名(32)が死亡したほか,島内各地で土砂崩れなどが発生した.7月1日22:30現在,自治省消防庁による被害集計は以下の通りである.
地震後の豪雨災害に関する一般論
 一般論として,地震の発生後は,地盤が緩んでいたり,地表面に新たな亀裂が発生して,地中に雨水が浸透しやすくなっているなどしていることから,降雨時に土砂災害をはじめとした豪雨災害が発生しやすい状況になっているといえる.今回の場合,すでに複数の地点で土砂崩れ等が発生していることから,今後も土砂災害が発生することが懸念される.そこで,ここでは基礎資料として神津島の降水量に関して簡単な検討を行っておきたい.


降水量の検討
利用資料:気象庁の観測資料,AMeDAS観測所観測値

 神津島にはAMeDAS観測所がないため,最近の観測資料からの検討を行うことが出来ない.東京都所管の観測所も,少なくとも1996年時点では存在していない.そこで,ここでは,まず気象庁の観測値から1951-1978年の降水量平年値を神津島周辺において参照した.


年別降水量平年値[1951-1978]


月別降水量平年値[1951-1978]


 神津島の年降水量平年値81951-1978)は2332mmであり,3000mm前後の三宅島,伊豆大島などと比べるとかなり少ないが,ちなみに伊豆半島南端の石廊崎が同時期で1853mmであり,本州太平洋岸と比べるとかなり多くなっている.月別降水量のピークは,6月・10月にあり,その間の7月・8月は少なくなっている.梅雨期と台風シーズンに降水が多く,梅雨期は関東地方付近と比べるとやや早目に終わるといえる.従って,今後は降水量がやや少ない季節に入ると考えてもよい.

月別降水量[本年]


 平年値から見ると,年降水量,月降水量ともに,神津島は新島との相関が高く,新島の観測値である程度神津島の降水量を類推することが出来そうである.本年については,AMeDAS観測所のある伊豆大島,新島,三宅島のデータを用いて,月別降水量の推移をみると,新島については4月はおおむね平年並み,5月は少雨,6月は多雨傾向であったことがわかった.神津島の傾向もこれに近いものと思われる.7月以降のことはわからないが,もし多雨傾向が継続するようであれば,今後の土砂災害により一層注意を払うことが重要であろう.


新島・三宅島のAMeDAS既往降水量記録  記録[mm]:記録日[yyyymmdd]

既往20年間の記録から見て,この程度の降雨は起こりうるものだと考えて下さい.
リンク
静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行
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