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2004年10月台風23号(0423号)豪雨災害
研究関係情報


2004/10/21作成開始,10/22,26,11/11加筆

本ページの記述は,すべてページ作成時の速報的なものであり,完全なものではありません.間違いがあった場合は修正するなどしていますが,基本的には大きな変更はしていませんのでご承知下さい.また,不適切な表現に気がつかれた場合は,こちらまでお知らせいただければ幸いです.

刊行物

災害概要

 2004年10月20〜21日にかけて,台風0423号が本州付近に接近,上陸した.この台風および北川にあった停滞前線の活動により,東北以南の各地に豪雨,強風,高波などがもたらされた.被害は,九州から中部の広い範囲に及び,特に近畿・中国・四国地方の被害が目立った.

本災害の特徴

現地調査資料

オリジナル資料

10月22日10時30分現在消防庁資料を基にした
死者・不明者の発生位置分布.数字は人数.
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本災害の特徴・特記事項

牛山が関心を持った事項のメモです.
「過去25年で最悪」などではない
「台風による災害」と「豪雨による災害」を区別すべきではない.今回の災害が比較的被害が大きかったこともあり,「台風による災害としては××以降最大規模」と言った表現が報道で目につく.たとえば22日産経新聞では「内閣府によると、百十五人の死者・行方不明者が出た昭和五十四年十月の台風20号以降では、過去最悪となった。」とある.これも「台風による災害としては」である.より大きな被害をもたらした1982年長崎豪雨や1983年島根豪雨がここでは「台風によらない災害」として無視されている.報道等では,豪雨災害のうち「台風」を極度に重視する傾向がある.しかし,大雨をもたらすのは前線など他の気象現象であることも多く,ことさら台風を別の災害として区別する意味はない.台風にばかり警戒心が向かい,それ以外の要因による豪雨災害を「思いもよらない災害」などととらえる硬直した思考形態を,もっと柔軟なものにしていかねばならないのではなかろうか.
人的被害の大きさ
今回の事例は,人的被害が多かったことが,大きな特徴の一つである.1971年以降の全国主要豪雨災害に示したように,今回の災害による死者不明者が80名以上に上るとすると,豪雨災害による人的被害の数としては,1993年7月31日〜8月7日の「平成5年8月豪雨」による鹿児島などでの災害(死者79,住家全半壊・一部破損824棟,床上床下浸水21987棟など)をやや上回り,1971年以降で10位程度の大きな人的被害となる可能性がある.
人的被害の分布
今回の事例は,人的被害が多いことが特徴であるが,犠牲者は特定の市町村,現場に集中せず,かなり広範囲に分布している.淡路島中部で10名,兵庫県北部から丹後半島付近で11名などがやや集中しているが,現場の位置はそれぞれ離れている.近年の主要豪雨災害では,特定の市町村もしくは県に集中的に人的被害が生じていることが一般的である.たとえば「平成5年8月豪雨」の場合は鹿児島市で死者不明者48名を生じており,1983年の「昭和58年7月豪雨」では島根県西部で死者不明者107名を生じている.1971年以降の全国主要豪雨災害にある事例中では,1982年台風10号および前線による豪雨災害が,今回と共通した特徴(人的被害が広域に分布している)を持っていると言えそうである.
1979年以降最大値(降水量)の更新箇所が多かったが
気象庁AMeDAS観測所の1979年以降最大値を更新した観測所は,1時間降水量2箇所,24時間降水量27カ所で,現在検討中だがおそらく今年の豪雨イベント中最も多くの更新観測所数になると思われる.更新観測所が多かったと言うことは,広域で豪雨が発生したと言うことであり,前述の人的被害が広域で発生していることと関係するようにも思われる.もっとも,2002年台風6号豪雨時には更新観測所は1時間降水量9箇所,24時間降水量32箇所と,今回よりも多いが,死者不明者は7名であり,更新観測所の数だけでは人的被害は説明できそうにない.
更新観測所の分布と人的被害の分布はややにている
24時間降水量1979年以降最大値を更新した観測所の分布と人的被害の分布は似ているようにも思える.「過去最大値更新」情報は理解されやすく,かつ深刻な被害に結びつきやすいという,防災情報として際名有益な情報であることを筆者は日頃から主張してきたが,今回の事例を見ても,この見方は的はずれではないものと思われた.
死因について
これは,台風0423号災害の犠牲者死因についてとして別にまとめました.

関連リンク

※本災害に関しての網羅的なリンクを作成することを目指しているものではなく,筆者の調査研究上の必要に応じて作成しているものです.「なにそれが欠けているので入れて欲しい」とのご要望をいただいても当方の必要がない限り必ずしもご対応しないこともありますのでご了解下さい.

静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行
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