1999年9月12日 室生

大野寺・室生寺・聖林寺


●大野寺
 今月は、就職以後、一番自分の時間を作りやすいのではないかと思う状況だ。まあ、昨年は時間に多少余裕が生じても、歩こうという気分にはならなかったし、気の持ちようの変化なのかもしれないが。ということで、今日は室生方面に足を伸ばす。
 大野寺は初訪問だ。有名な磨崖仏は、バスの車窓から眺めただけなので、まずはこれをじっくりと。大野寺は本当にこじんまりとした寺域。磨崖仏は、境内にあるのではなく、道と室生川をはさんで対岸にある。境内の方には、礼堂と呼んでよいのだろうか、磨崖仏を正面に拝める小堂がある。道に面した側の壁がまったくない構造なので、道の側から見るとちょっとユーモラスだ。
 磨崖仏の方は、思っていたより見にくい。はっきり見えるのは、お顔のあたりかな。仏足石のごとき、石彫りものは好きなので、この仏も好きになれそうだ。しかし、露岩に線刻するとは、よく考えたものだ。その分、どうにも危なっかしく思えてもしまう。見たところ、近年大きな出水の痕跡はないが、歴史的にはどうなのだろう。さすがに攻撃斜面ではないが、側岸侵食が本格的に始まったらひとたまりもなさそうだが。運悪く出水して、崩壊でもすると、「数百年なにごともなかったものが・・・」と言われるのだろうな。それを評価するのが私の仕事、かな。


●室生寺
 室生寺の単独訪問はもしかすると初めてかもしれない。参観の著名寺院らしい、こじんまりとした門前街が好ましい。有名な山菜料理の店で昼食を摂り、境内へ。奈良国立博物館での室生寺展は1週間前に終了しているので、そろそろ仏達も里帰りしているかと思っていたのだか、まだ戻っていない由。慎重に運ばれているのだろうか。
 室生寺の金堂と言うと、ぎっしりと仏が並ぶのが印象的なはずだが、今日はがらんとしている。本尊は、光背だけ御出張なのだが、意外に違和感がない。通常だと見えない、背後の扉の彩色画がよい背景になっているようだ。十一面観音の方は逆に光背のみ残されており、これはさすがに違和感がある。10日ほど前に国立博物館は行っているのだが、あそこでも光背だけの展示にも違和感を覚えたものだった。
 金堂、本堂を経て、いよいよ五重塔に向かう。もちろん、塔は修復中で足場で覆われているだけなのだが。
 塔をぶち倒した杉の巨木は、塔の北西側、奥の院への参道の方から倒れてきたらしい。奥の院への道をたどると、そこは鞍部になっており、鞍部の部分だけ木が激しく倒れた痕跡がある。五重塔の被害が衝撃的なので、室生谷全体が風倒木被害を受けたかの印象も持つが、けしてそんなことはなく、ごく局所的なものなのである。ただ、ここは確かに場所が悪い。谷沿いに上がってきた風が、室生川の屈曲によって行き場を失って集まるかのような場所、しかもその鞍部。塔の位置が悪かったと言えるのかもしれない。ある程度観測すれば傾向は分かる、か。
 奥の院への道沿いにもまだ倒木痕跡が有りそうだったので、先へ進んでみる。少し行くと、階段となり、長い階段の上に奥の院が見える。ここまで来て引き返すのしゃくなのでついつい上がってしまう。奥の院からの展望は・・・ ここにもお札売り場があり、2人ほどおっさんが座っている。あの人たち、毎日この階段上がっているのね・・・


●聖林寺
 室生口大野に戻ると、もう1550.直後の急行に乗って、桜井着1615.ちょっと中途半端な時間だが、まあともかく聖林寺に向かってみる。バスは行ってしまった直後なので、タクシー。
 ここもまた、単独訪問は始めてだ。高校研修旅行時、クラス行動で来たところだが、ここを選択したのは「私が行ったことがない」という理由だったんだっけな。ここの魅力はもちろん十一面観音だが、それと並んで、門前からの大和盆地の風景も大きな魅力だ。しかし、もう受付が閉まるかどうかのぎりぎりの時間なので、まずは駆け込む。
 ここの本尊は地蔵菩薩。これも大きな石造で、実に魅力的なのだが、まずは観音堂へ。先客が数人居たが、ちょうど帰るところで、これは落ち着いて拝見できそう、とおもいきや、蚊に次々と襲われ、堂内からは草々に逃げ出す。堂外から眺めていたのだが、ここでも蚊が次々と・・・ 虫除けスプレーも古寺巡礼には必需品かな・・・ かれこれするうちにもう17時。なんとなく後ろ髪引かれつつ、聖林寺を後にする。帰路は門前からの情景を堪能・・・  
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